「年110万円の贈与」はOK?

相続税の節税対策の基本は生前贈与です。
この「生前贈与」という言葉は、多くの方が一般的に使われています。
「年に110万円ずつ、子どもや孫の名義の口座に預金を移せばいいのですよね。
そう聞いてから、ずっと続けていますよ」というようなお話をよく聞きます。

実は、これは確実な生前対策の方法ではありません。
近年、後日の相続税調査でこの生前贈与が否認されるケースが増えています。
10年も20年も続けた対策が結局無駄にならないように、きちんと信頼できる専門家の指導を受けてから
実行に移しましょう。

贈与税の計算の仕組み

1.「贈与税」とは誤解を招きやすい名前です。
相続税は「相続した(=財産をもらった)人」が負担しますが、贈与税は「贈与した(=財産をあげた)人」が
負担するのではありません。
贈与税を負担するのは、「贈与された(=財産をもらった)人」です。
「贈与税」という名前に惑わされず、税を負担するのは常に「財産をもらった人」と考えてください。

2.贈与税の課税期間は1月1日から12月31日までのカレンダー通りの1年です(暦年課税)。
対象となるのは、この1年間にその人が贈与を受けたすべての財産です。
ですから、複数の人から贈与を受けた場合は、そのすべての贈与を受けた財産を合計して税額を計算します。

(例)
祖母から300万円、父から400万円の贈与を受けた場合の贈与税額の計算

祖母父基礎控除額課税価格
( 300万円 + 400万円 )- 110万円 = 590万円

課税価格税率控除額贈与税額
590万円 × 30% - 65万円 = 112万円

平成25年税制改正大綱での相続税・贈与税の見直し

(1)20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合

【贈与税の税率構造】
改正前(H26年以前) 現行(H27年以降)
金額 税率 金額 税率
200万円以下の金額 10% 同左 同左
300万円以下の金額 15% 400万円以下の金額 15%
400万円以下の金額 20% 600万円以下の金額 20%
600万円以下の金額 30% 1,000万円以下の金額 30%
1,000万円以下の金額 40% 1,500万円以下の金額 40%
3,000万円以下の金額 45%
1,000万円超の金額 50% 4,500万円以下の金額 50%
4,500万円超の金額 55%
【贈与税の速算表】
改正前(H26年以前) 現行(H27年以降)
金額 税率 控除額 金額 税率 控除額
200万円以下 10% 200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円 400万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円 600万円以下 20% 30万円
600万円以下 30% 65万円 1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円以下 40% 125万円 1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
1,000万円超 50% 225万円 4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

(2) (1)以外の場合

【贈与税の税率構造】
改正前(H26年以前) 現行(H27年以降)
金額 税率 金額 税率
200万円以下の金額 10% 同左 同左
300万円以下の金額 15% 同左 同左
400万円以下の金額 20% 同左 同左
600万円以下の金額 30% 同左 同左
1,000万円以下の金額 40% 同左 同左
1,500万円以下の金額 45%
1,000万円超の金額 50% 3,000万円以下の金額 50%
3,000万円超の金額 55%
【贈与税の速算表】
改正前(H26年以前) 現行(H27年以降)
金額 税率 控除額 金額 税率 控除額
200万円以下 10% 200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円 300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円 400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円 600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円 1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
1,000万円超 50% 225万円 3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

早期に生前贈与の実行を進める理由

ss

相続開始前の3年以内に贈与によって受け取った財産は、税法上、原則として相続によって受け取った財産とされてしまいます。
これは、相続直前の贈与を認めることは意図的に相続税の減額をすることを税制上容認することに歯止めをかけるべき、という考えによるためです。
一般的な考えでは、3年間は相続直前ではありませんが、税法ではこのような考えを採用しているため、生前対策は早いうちに考え始める必要があるのです。
贈与によって財産を受け取る方、贈与する財産の方針が決まったら、早めに実行に移すようにしましょう。

相続時精算課税制度を活用した生前対策

相続時精算課税制度って、どんな制度?

子どもたちが親の財産を有効に活用できるように、親の世代から子どもの世代に財産を移しやすくするための制度です。
近年ではこの制度の活用が徐々に増えているようです。

この制度の主な内容は次の通りです。
満60才以上の親から満20才以上の子又は孫が財産の贈与を受けたとき、2.500万円までは贈与税がかからず、2,500万円を超えた額から一律20%の贈与税がかかります。(年齢はいずれもその年の1月1日現在)
ただし、相続開始時には、この制度を使って贈与を受けた財産を相続財産に加算し、相続税の計算をします。
――子どもが親の実家の家を相続しない代わりに、親に家を建てる資金の一部を援助してもらう――
このような場合によく利用される制度です。

相続時精算課税制度、使うべきか、使わざるべきか

この選択は文字通りケースバイケースです。一見生前対策として税金上メリットが大きいように思えますが、
「一度選択すると、途中で適用を中止できない」という大きな制約があります。

毎年少しずつでも贈与を続けていきたい、とお考えになる方は、それが蓄積されていくことをお考えください。
合計金額が2,500万円を超えると、毎年贈与税を支払わなければなりません。

また、贈与者に相続が発生したときには、この制度を使って贈与した財産の合計を相続財産に加えて相続税の計算を行うことになります。
ただし、納付した贈与税は相続税から控除することになります。

相続時精算課税制度は、まだ他にも細かな留意事項があります。
本当は適用できない条件の方が多額の贈与を受けてしまうと、大変高い贈与税を納めなければならなくなります。
もちろん、有効に活用ができれば相続税の節税になることもありますので、この制度の適用をお考えの方は安易な判断をされずに、専門家によくご相談してお考え下さい。