不動産と相続

我が国の相続税申告で、不動産の占める割合は70%を占めています。
財産のなかでいかに不動産が重要な存在であるかということと同時に、不動産の相続については、
多くの問題点と対策を必要としていることをよく理解されることが大切です。

(1) 不動産を「共有する」ことは問題ないか

相続財産の中で不動産の占める割合が多いご家庭の場合、遺産分けがスムーズに進まないことがよくあります。
特に遺言書もなく「法定相続」を基本に遺産分けをすると、不動産を共有にする以外協議の収拾がつかないという事態になることもあります。
この場合、その不動産が共有しても差支えのない不動産であり、共有する相続人同士でその不動産について同じ考えをもつことのできる親しい間柄であるということが前提条件です。 不動産の共有については、共有にした後のその不動産の利用・活用のかたちを具体的に考えてから決めるべきです。
「財産分けの収拾がつかないから、とりあえず共有の登記をしておこう」という考えは、将来、大きな問題を引き起こしかねません。

登記をする前に、相続人同士で多方面から検討することをおすすめします。
念のため、専門とする税理士事務所にアドバイスを求めるのもひとつの案です。

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(2) なぜ「不動産の名義」が大切なのか

――よく理解しないままに、コンサルタントのアドバイスに従って相続の登記を済ませたが、このままでは具合が悪いので名義変更をしたいのだが――これは相続手続を終えたある方からの相談なのですが、残念なことに、実はこのようなご相談は珍しいものではありません。
「なぜわざわざ望まない登記を?」と不思議に思われるかもしれませんが、相続をされた遺族の方は、「権威ある会社のしっかりとした肩書きの方のアドバイスなのだから間違いはないはずだ」と思って、そのアドバイスに従われたのでしょう。
これは、アドバイスをした側は遺族の方の状況を十分に把握せずに、遺族の方もなかなかご自分から状況や希望を伝えきれずに「遺産整理業務」を行ったためなのです。

専門用語がわからないからと気後れせず、ご自身が納得されるまで、何度でもアドバイザーの方と相談を重ねましょう。
判断を誤った登記をした場合、次のような問題点があります。

a その不動産の活用・処分の方針が決まらず、税金の負担だけが残る
b 再び名義変更するためには贈与税がかかる
c 親族といっても、場合によってはその不動産の代金を準備して買い取らねば
ならないことがあり、売った側には税金の負担がある
d 払う必要のなかった登記関連費用や税金がかかる

不動産と相続

不動産の相続対策

ひとくちに不動産といっても、様々な種類と利用形態があります。
ここでは、代表的なものを取り上げて説明します。

(1) 住宅用の不動産

被相続人の方が住んでおられた居住用の不動産は、被相続人の方が財産として所有されている場合が多いと思います。
残されたご家族のうち、この不動産を誰が相続するのが最も適切なのかという問題は、よく話し合って決めるべき事柄です。
ただし、相続税を考える上では、不動産を誰が相続するかによって、減税制度の特例が受けられるか否かが決まってしまう場合があるので注意が必要です。
特に路線価の高いところにある居住用不動産は、相続税の節税の面から、この減税の特例を受けられる方が相続することを検討に入れるべきです。
相続された後、その不動産をどのように遺族の方が利用されるのかをもとに、検討されるのが最もよい選択ができるでしょう。

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(2) 広い敷地の自宅

親や祖父母の世代は子どもの数も多く、土地の価格も適切だった時代です。
家族のためにと頑張って広い敷地に大きな家を求められた方々が相続を迎える年代になっています。
子どもの世代がこのような広い敷地と大きな家を相続すると、その利用や維持費について、悩まれることもあります。
子ども世代がどのような暮らし方をするのかを、早いうちから検討を始められることをお勧めします。
場合によっては、一部その利用方法を別のものに変えるということも現実的に出てくるのではないでしょうか。
早期に検討すると、多くの選択肢の中から、時間をかけて相続税の対策案を検討・実行することができます。

不動産の相続対策

(3) 不動産の有効活用

1.駐車場にしているが、収入が減ってしまっている土地、特に利用されていない空地でも、相続税の評価が何千万円、あるいは億単位になる物件もあります。

ここに賃貸用の建物を建築して、賃貸を行なっている状態で相続が発生すると、一般に、下記の金額の評価減の効果があります。
*建築している敷地・・・15~21%
*建築した建物・・・約60%
*建築に関する諸費用・・・100%
マンションやアパートを建築して賃貸を行うと、相続税が低く済む、と言われている根拠がここにあります。

2.相続税の節税については確かに有効な対策ですが、具体的に検討するには、次のことをご自身もご判断してください。

イ 建築の提案をされている会社の信頼度を調べる。
提案の内容に無理がないか確認してください。
収支計画の適正さ、継続性、そして周囲の評判など。
ロ 投資金額(借入を含む)が、一定の期間に回収できる計画であることを検討してください。
ハ その賃貸不動産を相続し、管理できる相続人がいるかどうか、子どもたちの生活のなかで管理することに無理がないかどうか。

不動産の賃貸といえども事業です。多くの場合、建築資金に充当するために新規に借入をすることもります。十分に返済できる計画であるかどうか、将来の変動も視野に入れてお考えください。

財産と同時に、借入という負債の双方をご自身が所有・負担することになります。
これは多額の財産についての対策ですので、専門家のアドバイスも受けながら、メリットやリスクについて、正しい情報をもとに決断をしてください。

(4) 収入がある不動産

マンション・アパート等の、ある程度の収入を見込める不動産については、できるだけ早い時期から名義をどうするかを話し合われるようにしてください。
不動産からの収入は、財産を引き継ぐ方にとって、納税資金を準備するための有効な手段です。
不動産の名義人である両親の生活費や税金の負担、子どもの所得などを総合的に考えながら、条件が整うなら不動産収入を生む不動産を子どもに順次移転させていく方法もあります。
これは、長期的にみれば相続税の節税とともに納税資金を確保できる方法です。
移転する方法、その際の税金の負担など、具体的なことは専門家と相談しながら進めましょう。
取り組むのが早いほど、具体的な効果が期待できます。

不動産の相続対策

(5) 代償分割

相続財産のほとんどを占めるのはある大きな1つの不動産、しかし、相続人は複数人の子どもたち――よくある相続案件です。
この不動産が被相続人が経営する会社の敷地であったりすると、相続財産として分割することは不動産の活用の実態と合わないため、後々困ることになります。
このような場合、土地を引き継ぐ相続人が、引き継ぐ土地の分の金額の一部を自分の預金等で他の相続人に支払って遺産分割を成立させるという方法があります。
これを代償分割制度といいます。
この制度を実際に活用するには、不動産を相続する相続人が、他の相続人に支払うべき一定の現金・預金等を所有していることが必要条件になります。
代償分割の資金確保には、生前から収入を得ることのできる不動産の生前贈与を受けておく、また生命保険を活用する等の方法が考えられます。